米証券取引委員会(SEC)の試験枠では、トークン化株式の対象銘柄数と取引量に上限が置かれます。同一銘柄の再度の上限超過は3か月停止につながるため、保有権だけでなく停止時にどこで売れるかが読者の確認点になります。
- SEC試験枠は5年、Tier 1は75銘柄まで
- 同一銘柄の再超過で3か月停止が発動する設計
- SEC停止時の売却経路は商品条件で変わります
- Bullish連合は発行体主導標準を模索
SEC試験枠組みの対象と取引量上限
トークン化株式(株式に関係する権利をブロックチェーン上のトークンとして扱う仕組み)は、通常の株式投資に近い見た目で、暗号資産のように移転しやすい形を目指す商品です。ただし、米証券取引委員会(SEC)が9月17日に示した実験的なTSV枠組みでは、銘柄数と取引量の両方に制限があります。
この枠組みは5年の試験として、自動で価格を算出する取引方式を通じた売買を認める内容です。参加者やウォレットには確認基準が求められる許可制の設計です。対象となるトークン化株式には、配当や議決権など、従来株式と同じ経済的・ガバナンス上の権利を保つことが求められます。株価への連動だけを提供する合成的な商品は対象外です。
銘柄の区分ごとの上限は、従来の株式市場における前月の平均日次出来高を基準にします。
| 区分 | 対象 | 系列取引所を含む最大銘柄数 | 銘柄ごとの取引量上限 |
|---|---|---|---|
| Tier 1 | S&P 500、Russell 1000、一定の上場取引型商品 | 75 | 前月平均日次出来高の0.25% |
| Tier 2 | その他の適格証券 | 250 | 前月平均日次出来高の2.5% |
たとえば、従来市場で前月に1日平均1,000万株が売買されたTier 1銘柄では、トークン化取引の平均日次出来高の目安は2万5,000株です。これは1人の保有量ではなく、対象銘柄のトークン化取引全体を見る比較です。
3か月停止が発動する条件
取引量上限は平均出来高で見るため、1回の取引日だけ売買が増えても直ちに違反とは限りません。SECの枠組みでは、同一銘柄について系列取引所の活動も合算して判断します。
最初の上限超過には猶予があり、取引所は将来の順守を確保する必要があります。一方で、同じ銘柄でその後も上限超過が起きた場合、その銘柄は該当取引所と系列TSVで直ちに3か月の取引停止となります。停止期間は超過日から数えます。ほかの銘柄は取引を続けられます。
取引所は、上限を超えないように事前に取引を止めることもできます。取引量に関する停止が発生した場合、参加者へ直ちに通知し、5営業日以内に公開通知を更新することも求められます。SECは、実験の規模を小さく保つ理由として、トークン化された取引価格が従来株式の価格から離れるリスクを含め、広い株式市場への影響を抑えながら観察する点を挙げています。
保有権と売却経路の分離
この停止条項は、トークン化株式で混同されやすい点を浮かび上がらせます。トークンを保有していること、株式に結びつく権利を持つこと、実際に売却できる場所があることは、それぞれ別の条件です。
3か月停止は、対象銘柄の該当取引所と系列取引所にかかるもので、世界中のすべての同種商品を一律に止めるものではありません。ただし、保有者が単に別のウォレットへ移しても、それだけで売却手段が確保されるわけではありません。同じ商品を扱う適格な取引場所や、商品条件に基づく償還手段があるかは、発行体、保管の仕組み、参加者の資格要件によって変わります。
取引時間が長いことも、十分な量を希望する価格で売れることとは別です。アプリ上で株式名のトークンが見えていても、停止時の保管、株主権、移転の可否、償還の有無、手数料がどう扱われるかで、利用者が実際に取れる行動は変わります。
発行体主導標準が示すもう一つの課題
市場側では、発行体と株主の直接的な関係を保つ形の標準づくりも進んでいます。BullishとEquinitiは、公開証券のトークン化に関する標準策定を目的に、Issuer Sponsored Token Coalitionを設立しました。初期参加者にはAlpaca、Apex Fintech Solutions、DriveWealthが含まれます。
この連合は、単一の取引所や個別トークンを立ち上げるものではなく、既存の資本市場と共存するための基盤や運用標準を検討する作業部会です。狙いは、発行体が自社株式の表され方を把握し、投資家が所有権、企業活動、株主との連絡に関するルールを理解しやすくすることです。
トークン化株式の商品は、同じ企業のティッカーを使っていても、保管構造、株主名簿、決済方法、制限が異なる場合があります。SECの試験枠組みが取引量と停止条件を細かく定めていることと、発行体主導の標準化が模索されていることは、どちらも「そのトークンが何を表し、どの条件で売買できるのか」という同じ論点につながっています。
