イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、2027年予定のHegota後に開発の重心がSTARKや量子耐性化へ移る構想を示しました。検証方法の再設計は、将来の利用者や開発者の負担に関わる論点です。
- 2026年9月27日のブテリン氏論考が発端
- Hegota後はSTARKと量子耐性化が焦点
- PeerDASとSNARKで再実行から転換へ
- 2030年像では4〜8秒スロットを提示しています
9月27日公開の論考とHegotaの位置づけ
イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は2026年9月27日、論考「The cryptographic world computer」で、Hegotaをイーサリアムの技術転換点として位置づけました。
Hegotaは2027年に予定されたフォークです。フォークとは、ネットワークの仕様を切り替える更新を指します。ブテリン氏は、Hegotaについて、2015年のイーサリアム利用者にも特徴を認識できる最後の「通常の」フォークになる可能性が高いとの見解を示しています。
同氏がHegota後の開発対象として挙げたのは、再帰的STARK、自動形式検証、高度に最適化されたコンセンサス、量子耐性化です。再帰的STARKは、証明をさらに証明して確認作業を小さくする技術です。自動形式検証は、プログラムの性質を数学的に確かめる手法を指します。
PeerDASとSNARKによる検証方法の転換
ブテリン氏の構想では、イーサリアムの検証方法が変わります。現在のようにネットワーク参加者がブロックをダウンロードして取引を再実行する形から、PeerDASによるデータの標本化とSNARK検証へ移る説明です。
PeerDASは、データ全体ではなく一部を抜き出して確認する仕組みです。SNARKは、計算が正しく行われたことを短い証明で確認する技術です。この組み合わせにより、すべての参加者が同じ処理を丸ごと繰り返す前提から、暗号学的な証明を確認する前提へ重心が移ります。
ブロック構築についても、単独の構築者が内容を決める形から、複数主体が分担する形へ移ると説明されています。検閲耐性についてはFOCILが挙げられており、特定の取引が不当に締め出されにくい設計として扱われています。
2030年像に示された処理時間と利用者への意味
論考で示された将来像では、2030年のイーサリアムについて、スロット4〜8秒、ファイナリティ8〜32秒という数字が挙げられています。スロットはブロックを作る時間枠、ファイナリティは取引結果が覆りにくい状態を指します。
この数字は、性能がすでに実装されたという意味ではありません。ブテリン氏が示したのは、Hegota後の開発がどの方向へ進むかという構想です。利用者にとっては、取引の確定を待つ時間や、ネットワーク参加に必要な負担が下がる可能性に関わります。
開発者側では、計算を一つの処理に詰め込むよりも、分けて処理しやすい設計にするほうが有利になる方向も示されています。これは、イーサリアムを単なる台帳としてではなく、暗号学的な検証とブロックチェーン外の処理を組み合わせる基盤へ近づける考え方です。
実装保証ではなく開発の方向を示す構想
ブテリン氏の論考は、Hegota後のすべての機能が確定した実装計画として完了したことを示すものではありません。将来の機能や性能は実装済みの確定事項ではなく、同氏が示した構想や見解として扱う必要があります。
近い課題としては、ゼロ知識証明を十分に速く安全にすること、大きな状態データを多くの処理から読み書きできるようにすることが挙げられています。ゼロ知識証明は、内容を明かさずに正しさを示す技術です。
今回の論考が示した変化は、イーサリアムを「ブロックチェーン」と呼ぶ理由が歴史的なものへ近づき、実際には暗号学的な検証、プライバシー、分散型の外部処理を組み合わせる仕組みへ移るという見方です。Hegotaは、その転換前に置かれた最後の通常型フォークとして説明されています。
