米SECの企業金融部門スタッフが9月25日に示したFAQは、ステーキング受領証やプロトコル発行型トークンの条件付き分類を整理しました。ただしcbETHとstETHを名指し分類したものではなく、保有者にとってはETHへ戻る手順やガバナンス上の確認手段の違いが実務上の焦点になります。
- SEC FAQはcbETH・stETHを名指し分類せず
- cbETHはCoinbase条件とアンステーキングが焦点
- stETHはLido出金キューと市場価格差に注意
- Lido#214でstETH保有者の異議申立て機構
- 分類名だけでETH償還条件は決まらず
SECスタッフFAQにおける受領証と発行トークンの条件付き分類
SEC(米証券取引委員会)の企業金融部門スタッフが9月25日に示したFAQでは、リキッドステーキング(預けたETHに対応するトークンを受け取り、資産を動かせるようにする仕組み)をめぐり、二つの分類が整理されています。条件を満たすステーキング受領証は、預けた資産の所有権を示す「デジタルツール」になり得る一方、プロトコルが発行するトークンは「デジタルコモディティ」になり得る、という内容です。
ただし、この整理はcbETHやstETHを名指しで分類していません。FAQで使われる「なり得る」という条件付きの表現は、名称がステーキングトークンであるだけで個別商品に同じ法的位置づけが与えられる、という意味ではありません。スタッフ見解は法的拘束力のあるSEC決定でもなく、商品ごとの権利、保管、償還手順を置き換えるものでもありません。
2025年8月のスタッフ声明についても、預けた資産と報酬を示す移転可能な証拠としてリキッドステーキングトークンを扱う範囲が示された一方、再ステーキングや、事業者がステーキングの選択・報酬設定・追加収益を左右する取り決めは対象外とされています。対象外であること自体も、証券性の認定を意味するものではありません。
cbETHとstETHで異なるETHへの戻り方
cbETHは、Coinbaseを通じてステーキングされたETHと報酬を表すトークンとして説明されています。Coinbaseの利用条件では、cbETHを売却・移転すると、基になる所有権と契約上の償還権も受け手に移るとされています。ただし、売却は市場取引であり、買い手が存在することや、ETHまたはステーキング済みETHと同じ価値で取引されることは保証されていません。
償還の手順も売却とは別です。対象となるcbETH保有者がアンラップするには、Coinbaseアカウントの状態やステーキング参加条件を満たす必要があり、地域制限や処理遅延もあり得ます。アンラップで戻るのは、ただちに使えるETHではなく、まずステーキング済みETHです。その後にETHを得るには、別途アンステーキングの手続きとEthereum側の処理完了が必要です。
stETHは、Lidoの仕組みにETHを預けた利用者が受け取るトークンです。プロトコル経由でETHを取り戻す場合、保有者は出金リクエストを出し、キュー(順番待ちの列)に入ります。処理はキューの容量やEthereum側で取引承認に参加する人の退出処理に左右されるとされ、最終的に戻るETHも、プロトコルの会計やスラッシング(運営上の違反などで預けた資産が減る仕組み)といった要因の影響を受け得ます。市場で売る選択肢もありますが、その場合も相手方と価格条件に依存します。
Lido投票#214によるstETH保有者の異議申立て機構
Lidoでは、オンチェーン投票(ブロックチェーン上で記録される投票)#214が5,820万LDOの賛成参加で可決したとされています。この投票により、Dual Governance V1のパラメータがEthereumメインネットへ適用され、stETH保有者が一部のガバナンス行為に異議を唱えたり、実行を遅らせたりする仕組みが導入されました。関連する緊急ガバナンス遅延は14日に延長されています。
従来のLidoの意思決定では、ガバナンストークンであるLDOの保有者が投票権を持ちます。一方で、Lidoに預けられたETHの経済的な影響を受ける人と、LDOを多く持つ人が一致するとは限りません。Dual Governanceは、LDO投票を置き換えるものではなく、stETH保有者が重要な変更に反応するための追加の確認手段として位置づけられます。
この更新は、SECスタッフFAQが示した分類の話とは別に、リキッドステーキングの実務上の論点を補います。つまり、トークンが移転できること、規制上の分類が議論されること、保有者が預けたETHへ戻れることは同じではありません。cbETHではCoinbaseの条件、stETHではLidoの出金キューとガバナンス設計が、それぞれ保有者の出口と権利行使の範囲を左右します。
